PENTAX SP / Super-Multi-Coated TAKUMAR F1.8 55mm |
昔話ですが、すこし長くなります。
何時のことだったでしょうか。もう何年も昔のことです。
やりたくないことを何年も何年も辞めることなく続けてきました。
負けたくなかった、そんなかっこいい理由では無くて。
逃げる勇気が無かった、ただそれだけのことでした。
たった一言、「辞めたいです。」
そんな一言ですらあの時の僕には言えませんでした。
過ごす環境が変化してもなお、僕はこれまでとは別のやりたくないことしていました。
勿論理由は逃げる勇気が無かったからです。
あの頃を思い返す度に、自分のみっともなさに吐き気をもよおしていました。
そんな折に、ふと、訪ねてみようと思ったのです。
ただただ不愉快で、ただただ毎日が退屈だったあの場所に、
ふと訪ねてみようと思ったのです。
あの頃と変わらず、そこには青春を謳歌する少年少女の残像が、
朧げに、まるで亡霊のようにグラウンドに立って、
僕と青春の間を邪魔するのでした。
でも何故でしょうか、夕暮れ時のグラウンドは、
まるで旧友であるかのように僕を優しく包み込もうとしてきたのです。
僕の勘違いだったのかもしれません。
校舎の影に沈む夕日が、僕を勘違いさせたのかもしれません。
それでも良い、と僕は思いました。
勘違いでもいいから、一時の幻想でも良いから、
夕焼けに染まったグラウンドを、海岸線で輝く砂浜のようなグラウンドを、
自分だけのものにしたかったのです。
自分の青春を手に入れたかったのです。
単なる記憶を、
美しい思い出にしたかっただけなのです。
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